大昭和紙工産業株式会社

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【特集】気象予報士くぼてんき|ポイントは楽しむこと!天気と環境の話

気象予報士・防災士・こども環境管理士・紙芝居師など、様々な資格や経験を持つ、くぼてんきさん。入道雲をイメージしたアフロヘアーの髪型で、難しい天気の話も、お笑いの経験や紙芝居を活かして、「ポップに楽しく語る」スタイル。子どもから大人まで惹きつけるくぼてんきさんに、カンキョーダイナリーが特別インタビュー。

朝の情報番組にレギュラー出演するまでの道のりや、天気や天候の視点から考える環境問題についてを伺いました。

夢を断たれてからお天気キャスターになるまで

合格率5%と言われる気象予報士。なぜ独学で難易度の高い資格に挑戦したのですか?



もともとダンサーになりたくて、アルバイトしながらダンスの学校に通っていたんですけど、高校卒業してすぐの春にヘルニアと疲労骨折で半年間寝たきりになってしまって。そんな時にテレビで石原良純さんが気象予報士の試験についてお話しされていて、「やることもないし、やってみようか。」っていうのがきっかけです。

僕は「タイミング」を大事にしていて、子どもの頃から何となく空と理科が好きだったので、「この出会いは運命や!」って勝手に思って。寝ながらだったら本でも読めるし、勉強することにしました。もしその時テレビでやっていたのが違う試験だったら違う人生になってたのかは分からないですけど、偶然と好きなものが重なったような感じですね。

もう一つの肩書き「紙芝居師」とは?

僕が紙芝居師になったのは、気象予報士になってオーディションを受けていた時期に、あるテレビ番組でやっていた「紙芝居師募集!」っていうの見て、履歴書を出したことがきっかけです。




ダンサーの夢を諦めて勉強を始めた時に、ゆくゆくは「お天気のことを楽しく伝えたい」と思っていたので、大阪のNSCに入ってお天気漫談とかお天気漫才をしていました。それが上手くいかず、上京してトリオとかピンで活動していた時には、周りには「お天気の知識を披露して笑ってもらうよりも、『へー』って言ってもらう方が、君に合ってるんじゃないか」って言われていたんです。でも当時は、笑わせたい、キャーキャー言われたいって言う想いが強くて。




紙芝居師としてお天気の知識をストーリー仕立てにやってみたら、意外と子どもも大人も反応が良くて、難しいことも物語で楽しい感じにすれば伝わりやすいっていうことが分かりました。

気象予報士の他に「防災士」や「こども環境管理士」の資格を取得した理由は?

「こども環境管理士」は、幼稚園や保育園の先生が取る資格。お天気の紙芝居をやっているうちに、お天気の話から環境・防災のことに触れる仕事が増えて、何か「環境」を名乗れる分かりやすいものがあったらいいなと思っていたんです。ちょうどその時、息子の幼稚園の先生がこども環境管理士を持っていることを知り、資格を取りました。イベントのクライアントさんの要望をその時々で勉強して材料が増えていった感じですね。


紙芝居だからこそ伝わる!現在の活動スタイルについて

環境や防災がテーマの講演で意識していることは何ですか?


僕の場合、見た目もこうですし、名前も「くぼてんき」なので、子ども向けになります。この活動を始めて10年以上になりますけど、一番初めに見てもらった子どもも二十歳を超えていたりするんですよ。きっとその子がまた子どもたちに伝えていくことになると思うので、「この世界楽しいねんで、知ってた方が得やで」って子どもを楽しませて、きっかけ作りをすることは意識してますね。

講演で僕の話が脱線しても、具体的な数字や本当に伝えたいことはちゃんと紙芝居の中にあります。お笑いをやってたから分かるんですけど、ただしゃべってるだけじゃ全然ウケないんですよ。お客さんと漫才をするような感じで、子どもがボケて僕がツッコんで、それを親が見て笑って、「またイベント来てください」って言われるように、次に繋がっています。



デジタルツールを使った動画で解説するスタイルが定着する中、紙芝居で伝えることを選ぶくぼてんきさん。紙の良さとは?

広い会場の時はもちろんスクリーンに写したりするんですけど、紙で距離が近い方が深く伝わっていると思うんですよ。紙にすると白黒はっきりじゃなくて、グラデーションで表現することができる。一番分かりやすいのは僕のSNSの天気のイラストだと思うのですが、コンピューターでちゃんとした地図に細かく書いた方が正確だけど、正直天気も100%当たるわけじゃないし、「この辺こうやで!」くらいの方が参考にしやすいと思うんですよね。そのほうが人間味があるというか、距離が縮まるかなって。



朝の情報番組「ZIP!」のお天気キャスターになるまでの経緯は?

気象予報士の資格を取ったのが21歳で、テレビに出られたのは33歳。12年間テレビに出られない中、たまたま応募したテレビ神奈川に採用され、3年間お天気キャスターを勤めました。テレビ神奈川でのレギュラーが無くなった後、違うテレビ局のデスク業務に応募して「普通の髪型にして、本名だったら良いです」という話に「分かりました」と返事をしたのですが、予算の都合でなしに...。ちょうどその日に、ZIP!のオーディションのお話がきて、受けることにしました。





だから全部繋がっていて、実務経験をさせてくれたテレビ神奈川がなかったら今はないですし、疲労骨折とヘルニアやってなかったら、そもそもお天気の勉強もしてないですし。流れてここまで来ました。当時は目の前に来たものを、ただそれしかなかったから挑戦した、という感じですけどね。





今後も、お天気キャスターとしてずっとテレビに出ていたいとは思っています。それをやりつつ、イジられやすいおじさんが、難しい話を子どもたちに楽しそうに話して、興味持ってもらって。新しい木を増やして、老木は切られて間伐材として役に立って終わるっていう感じですかね。人生あと数十年しか生きられないけど、地球はまだ生きているでしょうし、バトンタッチしながら、きっかけ作りをしていければと思っています。

温暖化じゃなくて極端化?天気・気候から見る環境問題

地球温暖化とは何ですか?原因は?



文字通り「地球の温度がだんだん暖かくなっていること」。ただ、最近も季節外れの大雪が降ったのが地球温暖化の影響だと言われているのですが、子どもたちには「何で暖かいのに雪降るの?」って絶対に言われます。なので個人的には、暑い日と寒い日の差が激しくなってバランスが悪くなっている。「温暖化」と言うよりは「極端化」って言うのが分かりやすいのかなと思っています。ただ平均すると徐々に上がっているのも事実なので、気温上昇は緩やかにしていく必要はありますね。




原因は色々あると思いますが、基本的には「もったいないことをやりすぎたこと」。みんながちょっと我慢したり、ちょっと分け与えたりとかできればそんなに大変なことにはならないですよね。冷房も、部屋の中は涼しいけど部屋の外は室外機で温度が上がって、「地球の温度はプラスになるのか、マイナスになるのか」なんて子どもと話したりするんですけど、「何もしなかった時の方がちょうど良かったんじゃない?」って思ったりします。答えは出ないんですけどね。

天気と地球温暖化はどのように関係しているのですか?

日本の上空は西から東に流れる偏西風があります。それが蛇行してくると、北に蛇行した部分は暖気が入り、南に蛇行した部分は寒気が入るんです。人間もプラスとマイナスの差が大きくなると、体がついていかず、体調が悪くなる。地球も人間と同じで、「暖かい」と「冷たい」が同時に存在して負荷がかかるんです。




気温の上昇は、食べ物に影響を与えています。例えば、昔はお米の名産地といえば新潟でしたが、最近では北海道でもたくさん取れるようになってきました。日本で言えば北海道が一番北ですが、もっと暑くなったらどこのを食べるんだろう、と。近くで作ったものを食べる「地産地消」の方がトラックで運ばない分、二酸化炭素や排気ガスも出ず環境には良いのですが、それが地球温暖化でできなくなっているのは「やばいな」って思います。

あとは、俗に言う「ゲリラ豪雨」。専門的には1時間に50mm以上の雨が降る「短時間強雨」と言うのですが、その頻度が増えています。雨も毎日ちょっとずつ降っていれば全然怖くないんですけど、降らない日が続く干ばつとか、1日に100mmくらい降って土砂崩れ、とか。地球では暖かいところもあれば寒いところもあって、それを混ぜるために風が吹いたりして天気が動くので、できるだけ寒暖差が少なくちょうど良いくらいにできれば、災害はかなり減ると思います。




天気予報では、天気が穏やかなときはゆったり、ちょっと楽しいことも織り交ぜて話せるのですが、大荒れの時には言わなくちゃいけないことがいっぱい出てきます。異常な事が起きると忙しくなるんですよね。直接すぐに影響はなくても、ガソリンの値段が上がったとか、大根の値段が2.5倍になったとか、一般の人にとっても大変なこと、心配なことが増えてしまいます

プラスチックや二酸化炭素が及ぼす気候変動への影響

私たちが排出するCO2と気候変動はどのように繋がっているのですか?

CO2自体が熱を吸収するものなので、増えれば増えるほど気温が上がりやすいのは間違いないと思います。ゼロになっちゃうと地球の温度がマイナスになっちゃうんで、適度になくちゃいけない。だから今の生活と同じくらいの生活を続けたいのであれば、違う面でカバーするしかないんです。分かりやすいのは木を植えること。育てて消えて…って循環させないといけません。若い木に光を当てて育てるために、間伐するのはプラスになるので、CO2の吸収率の高い木を育てつつ、低くなった木を資源として使う方が良いですね。

拡大生産者責任(EPR)※を問われる使い捨てプラスチックの使用。気候変動とも関係はあるのでしょうか?

まず、プラスチックゴミを海に流すとか、勝手に燃やして埋めるとか、絶対いつか影響は受けますよね。今すぐに影響がなくても近い将来には、さらに裕福な暮らしのために吐き出し、埋め続けていれば、地球温暖化も間違いなく進んでいくと思います。




プラスチックの製造や処理で発生する二酸化炭素などの物質については、二酸化炭素が全て悪いわけではないものの、空気がどこまで熱を帯びて暑くなるかと関係していますし、CO2よりももっと熱を吸収してしまう気体があればもっと気温は上がるので、もしそのような気体がプラスチックゴミの燃焼で出ているのであれば、もっと暑くなる可能性はありますね。

使い捨てのプラスチックを減らすために、ちょっと不便になるけど昔みたいに計り売りに戻したり、紙袋のような自然に還る袋を増やしたり。ちょっと戻りつつ、新しい便利なものも育てつつ、同時進行で行くしかないですよね。あとは子どもの面白い発想。大人になると考え方が凝り固まってきて、「こんなことくらいしかできないだろうな」って諦めるんですけど、子どもはいろんなことを発見するので、それをこれからも聞くために、僕も話す活動を続けていかなくちゃいけないなって思いますね。



※拡大生産者責任(EPR)|OECD(経済協力開発機構)が提唱した、生産者が製品の生産・使用段階だけでなく、廃棄・リサイクル段階まで、生産者が責任を負うという考え方。生産者が使用済み製品を回収、リサイクルまたは廃棄し、その費用も負担すること。

読者の方へのメッセージ

友達や家族の間では話題にしにくい「環境」のこと。上手く話題にするには?



僕の場合、妻が僕より先にエコ検定を取って、防災士の資格を僕が取った時には妻も受けてくれたんです。資格をとったことで自然と防災や環境の話も家でするようになりました。子どもには、「防災士の資格取ったらゲーム買ってあげるよ」って、不純な動機なんですけど、いつか取ってくれたらそれだけでも面白いし、防災の話が家でできると思うと良いかなって思って。「国語・算数・環境・防災」のように、学校の教科としてあれば第一歩を踏み出した状態になるので、そうしたいですね。

地球の未来のために行動したい人に、アドバイスをお願いします。



一人では続かないんですよ。なので人を巻き込むこと。自分以外の意見も大事だと思います。あとは勉強ばっかりだとしんどいので、少しずつ、楽しんでほしいです。楽しい感じが出ていれば、自分も楽しいでしょうし、周りもフォローしてくれるようになると思うので。「一時的に地球温暖化が止まりました!」っていってもなんの解決にもならないので、自分の活動もそうですけど、やり続けて、やり続ける間にいろんな良いものを見つけていくのが良いですね。




編集後記

様々な資格を持つくぼてんきさんに、学び方のコツを伺うと「諦めないこと」と言う答えが。気象予報士の教材の1ページ目には「1日10分だけでもやる」と書いていたそうです。「『今日は1時間できなかったから明日2時間やろう。』まではカバーできますが、『今週は1回もやってないから来週7時間やろう』っていうのは無理なので。環境のこともそうなんです。溜めてやろうとするともうできないので、毎日ちょっとずつやっていくしかないですよね。」とのこと。目の前のチャンスに飛び込む勇気と、自分の知識と経験をコツコツ積み上げて活動に繋げる努力に、感銘を受けました。